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T君

トレーシングペーパー, 水性ペン

2014年

建築図面やパースに描かれる点景としての人物は、そこでどのような営みがなされるか、あるいはその建築をどのように使って欲しいか、という考えを示すために描かれることが多く、見る人にとっては、まだ見ぬ場所に自分が立った時を想像するのに大いに役立ってくれる。
ここに佇みうごめく人達も、建築が使われている様子を分かりやすく表現しようと描き始めたのだったが、一体一体夢中で描いているうちに、妙に胸騒ぎのする集合体となってしまった。彼らの顔や身体のようなものは個々で描き分けられておらず、ともすれば同じ人間が姿勢を変えて色々な場所に出没しているようにも見え、そこにはある種の時間が、ぽつぽつと生まれているように見えてはこないか。あるいはそう見えるように描ければ、と考えるようになった。
以来この顔のない、のし餅のようなヒト型が、wyesのスケッチに出没する人物の典型となっている。

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